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社会派サスペンス【ブリッジ・オブ・スパイ】ネタバレ感想

今日は、トム・ハンクス主演の「ブリッジ・オブ・スパイ」を観ました。

この作品は、政治的な予備知識も多少必要なので、そのあたりの解説もしたいと思います。

 

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出典:映画『ブリッジ・オブ・スパイ』公式サイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

 

実話映画「ブリッジ・オブ・スパイ」あらすじ

 

アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950~60年代。ジム・ドノヴァンは、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界平和を左右する重大な任務を委ねられる。それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕らえられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった。

良き夫、良き父、良き市民として平凡な人生を歩んできた男が、米ソの戦争を食い止めるために全力で不可能に立ち向かっていく

 

実話映画「ブリッジ・オブ・スパイ」ネタバレ&結末

 

ドノヴァンは非常に優秀な弁護士ですが、ある時ソ連のスパイ、アベルの弁護を引き受けることになります。

当時はアメリカとソ連が冷戦中だったので、ドノヴァンはソ連のスパイを弁護するってことでめっちゃ世間の非難にさらされるんですね。
ドノヴァンはそもそもそれが分かっていて、最初は弁護を引き受けない。

しかしいざ引き受けるとなると、どんどん事件にのめり込んでゆくわけです。

 

普通に考えて、当時の法律ではスパイのアベルは当然死刑だと言われてるんですけど、ドノヴァンは「今後アメリカ人スパイがソ連に捉えられる場合もある。そういうときに交換材料として生かしておくべきだ」と判事に交渉し、死刑は免れます。

アベルが死刑を免れたということで、世間からますますドノヴァンは批判されるようになり、自宅が襲撃を受けるほど加熱してしまうわけ。

 

で、実際にアメリカの若きスパイがソ連に捉えられ、彼とアベルを交換するという運びになるわけです。

その交渉人として、ドノヴァンがベルリンに送られるわけです。

 

それはちょうどベルリンに壁が生まれる前後のことです。

恋人に会うために壁を突っ切ろうとしたアメリカ人の学生が、スパイと間違えられて捉えられてしまいます。

 

そこで交渉はどうなるのか?という話になります。

要するにこの時点で、アメリカ側にはアベルだけしかいなくて、ソ連にはスパイの青年パワーズと、無実の学生プライアー2人がいるということです。

 

アメリカ側はスパイのパワーズだけしか必要としていなくて、しかしドノヴァンはアベルと引き換えに無実の学生プライアーも助け出そうとするわけです。

CIAとしては「いやいやいやそれ必要ないし。カンケーないし」って感じで、とにかく穏便にパワーズを助け出したい。だってパワーズが敵地にいる以上、重要な情報が漏れてしまったりする可能性もあるからね。

 

しかし、ドノヴァンはヒューマニストですから、「いやだ!絶対にプライアーも救う!!じゃなきゃ交渉決裂!!!」とかワンマンし始めるわけです。

まあ、別にここは↑こんな風にしゃべってるわけでもないけど(笑)

その辺の話は割と淡々と描かれますが、ようはドノヴァンは熱い男なんです。

 

しかし、当時の東ドイツは本当に酷い状況で、ドノヴァンは真冬の豪雪の中コートを盗まれてしまうし、せっかく交渉人として訪れたのにめちゃくちゃ汚いホテルに泊まんなきゃいけないとか、ひどい目にあいます。

だけど、さっきも言ったけどドノヴァンはもう「絶対に!!プライアーも救うのだ!」とかなり頑固な様子。

CIAとしては、そのせいで国家が危険な立場に立たされるのだから、マジで勘弁してくれって感じなんですね~。
まあ、気持ちは分かりますが。

 

しかしドノヴァンの頑張りで、アベルとプライアー&パワーズの二人の交換が成功。

 

ドノヴァンはようやくアメリカの自宅に帰ります。
極秘の任務だったので、家族はドノヴァンがイギリスに行っていたと知らされていたわけです。

そこで、ニュースでドノヴァンが交渉にこぎつけたということが流れ、「パパってすごい!」って感じでめでたしめでたしでした。ちゃんちゃん。

 

 

 実話映画「ブリッジ・オブ・スパイ」評価&感想

スピルバーグ近年の十八番、社会派ヒューマン系サスペンス

スピルバーグの作品というと、線で引っ張ったみたいに「社会派ヒューマン系」と、「エンターテインメント系」という風にきっちりと分けられる印象があります。

この作品はちょっとサスペンスフルに描かれてはいますが、基本的には「社会派ヒューマン系」ということになると思います。

スピルバーグは、「シンドラーのリスト」でも分かるように、非常に近現代史の問題を扱ったものが多いです。もちろんそれは昔から(「カラー・パープル」以降)常に描かれてきたものですけど、「ミュンヘン」以降はよりテーマが込み入ってきている印象です。

この「ブリッジ・オブ・スパイ」も冷戦を扱った作品で、なかなか込み入っていましたね。一部、セリフを追うのに苦労するシーンも。

 

冷戦や、特にベルリンの壁に関しては日本からは少々遠いテーマのように思えますが、知れば知るほど洒落にならない時代だったのだな、という風に思います。

私個人的には、ドイツの東西分断やベルリンの壁に関して非常に興味があります。実際にベルリンへ行って壁を見たり、壁に関する博物館に行ってきました。

で、私の勉強不足かも知れませんが今まではあんまり壁ができる瞬間を扱った作品に、私個人はめぐり合ってこなかったので非常に興味深かったです。

関連の書籍はいろいろ読みましたが、映像で見るとまたなかなか迫ってくるものがありますね。

 

ベルリンシーンがとにかく圧巻の出来栄え

この映画でも最も興味深かったのはベルリンに行ってからの様子です。

まあとにかくこの映画が非常によくできているというのは、ベルリンに行ってから主人公が何をしてもうまくいかないというところで。

特に素晴らしいなーと思ったのが、長蛇の列を乗り切って東側に行ってから、若者にコートを奪い取られて、取引の相談をする場所に行くところですね。

ダラダラと静かに長いシーンですけど殆ど英語が使われていなくて、すごい疎外感が演出されていました。スピルバーグはいちいちなんでも説明したがるきらいもあるのですが、このシーンは非常に美しかったです。

昔はスピルバーグと言ったらとりあえずなんでもドラマチックにしておけばいいっていう感じでしたけど(そこが好きなんだけど)最近はずっしりとカメラを構えて慌てない様子でダラダラと映画を作っている感じが、少しロマン・ポランスキーを彷彿ともされ、大変好ましい事態かと思われます。

特に良かったのが、壁を越えようとした家族が狙撃されるシーンです。
ベルリンの博物館でも、当時の人々がどのように逃げようとしたのか、ということがいろいろ展示されていて、思い出しました。

少し話は離れますが「ミュンヘン」なんて言うのは後期スピルバーグの最高傑作と言ってもいいかもしれません(「マイノリティ~」や、「宇宙戦争」など、まあ、傑作は数多いんですけども……)

そういうわけでブリッジ・オブ・スパイもかなり素晴らしい印象のまま突き進んでいきますが……ああ、それなのに。

 

クソみたいなヒューマン的なエンディング

 

スピルバーグっていうのはこれだけクレバーな作家でありながら、どっかでどうしても客を感動させなきゃいけない症候群かなんかなのか?

 

なんで泣かせなきゃならん!!
なんだ、帰ってきてからのあの妻は??家族は???


どうしても、主人公を英雄にしないとスピルバーグは死ぬんでしょうか?

 

 

いらん、一切、いらん!!!!!

 

まあもちろんそういう英雄をモチーフにはしてるにしてもですよ、いらねえんだよ、そういう自画自賛みたいな描写は。

うざい!

せっかく、人質の交換の後に、スパイのおじさんが車の後部座席に座らされて、そのあと米国のスパイの子が邪険に扱われたところまではフェアに描いていたのに、そのあとなんか主人公が素敵な中流家庭の家に帰って温かく迎え入れられる描写はマジでいらなかった。

しかも、電車では新聞を読んでいたおばさんに微笑みかけられたり、ほんと無理だった。

そういう点で言えば、「ミュンヘン」はそういうところが全然なかったですよね。

 

結局はアメリカ万歳映画

 

そもそも、この映画はなんか結局アメリカ至上主義なんですよ。
アメリカは捉えたスパイに拷問とかしないし、ソ連はしてたでしょ。

 

いやいやいや、アメリカだって、しただろうっていう(笑)


実際したかどうかはさておいたとしても、そういう描写ってあんまり趣味よくない。

ドイツの混乱の描き方にしたって、「アメリカはこんなに充実しているのにね」っていう上から目線感がぬぐえない。

スピルバーグのムカつくところが一気にでてきたなあ、という感じ。

 

それにしても役者はとにかく圧巻だった

それにしても、はじめから衝撃的だったのが、ソ連のスパイ役のマーク・ライランスでした。

あまりにもすげー。

 

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あまりにもすごい演技過ぎて、彼が出て来るところは本当に心が躍りました。

後で調べたらアカデミー賞の助演男優賞を受賞したとか。当然でしょう。

この映画は彼以外にしても、役者が素晴らしかったです。

トム・ハンクス以外はほとんど知らない役者でしたけど、ロシアの交渉役の人とかもかなり最高に良かったし。
出て来る人出て来る人癖っぽくてよかったです。いい意味で、あんまりスピルバーグっぽくなかったですね。

ところどころかなり笑えたし。

 

実話映画「ブリッジ・オブ・スパイ」オススメ度は?

 

 

とまあ、結局お前はスピルバーグが好きなのかどうなのよ??っていう書き方になってしまいましたが、基本的にはラストの展開以外は非常に楽しめました。

 

オススメです!!