映画みなくても死なないよ

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画みなくても死なないよ。

映画と本と芸術と旅。好き勝手やってます。

ネタバレ感想・アカデミー賞作品賞受賞作【普通の人々】はほんとうに駄作なのか?

1981年のアカデミー賞の作品賞を取った作品です。

アカデミー賞至上最も地味な作品賞の一つ、とか言われちゃってるわけだけど(笑)
監督したのは、ロバート・レッドフォードです。

本当にこの作品は地味な作品なのかを見ていこうと思います。

「普通の人々」は地味な凡作なのか?

まあ、地味でしょう(笑)
地味かどうかでいったら、残念ながら地味な作品と言わざるを得ません。

ここで、この作品のストーリーを上げてみようと思います。

平穏な日常生活を送っていた家庭に、長男の事故死、続いて次男の自殺未遂という事件が起こる。この出来事を契機に愛情と信頼によって固く結ばれていたはずの一家が、激しく揺り動かされ、目にみえない緊張が家の中を支配していく。そして、それぞれに苦悩を抱えた3人の関係は、しだいに噛み合わない歯車のようにぎくしゃくとしたものとなっていく。

とまあ、こんな感じの地味な作品です。

数年前のCutに書かれた徹底批判

数年前のCutの、「アカデミー賞は本当に偉いのか?」という特集記事では、歴代のアカデミー賞全作品の概要を掲載し、「取るべきだったか否か」という評価が書かれています。

それによると、「普通の人々」は……

勝因

我々の考えた説はこうだ。当時のロバート・レッドフォードは過去10年間で最もビッグなスターのひとりで、しかも非常にハンサムでもあり、ハリウッドの人間の6割くらいはこの時点でまだ彼に魅力を感じていた。そんな彼が映画を作り、しかもそれが優れた映画だということになると、今述べた理由からオスカー選考委員が過度の影響を受けてもおかしくない。またひょっとするとオスカーは、「レイジングブル」で繰り返し映し出されるファイト・シーンにたじろいでいるうちに、あの映画の素晴らしさをつい見逃してしまったのかもしれない。

勝つべきだったのか?

オスカーによる最も有名な誤審のひとつだ。

 Cutより引用

 とまあ、ここまで徹底的に批判されるのもすごいね、という感じ。

アカデミー賞は時代を映し出す鏡

私は別にアカデミー賞信者ではないし、本当にどうしようもない駄作が選出されることもしょっちゅうだということを踏まえたうえで言いたいんですが、この「普通の人々」の地味さは確かにお墨付きかもしれないけど、作品のクオリティとしてそれほど否定されるべきものではないと思います。

この前の年にアカデミーは「クレイマー、クレイマー」を作品賞に選んでいて、やはりどちらも家庭の崩壊、ということを描いています。

ここで、ちょっと下の表をご覧ください。

f:id:nitari-movies:20170319105154p:plain

図録▽主要国の離婚率推移(1947年〜)からの引用です。

このデータによると、アメリカで最も離婚率が高かったのが、1980年前後の事なんですね。

しかも、それに至るまでの1965年くらいからの急上昇

多分、この映画や「クレイマー、クレイマー」が制作された前年あたりは、アメリカでは徹底的に離婚問題が社会現象化していたのだろうと思います。

この映画がこれだけ評価した理由はそこにあるわけです。

アカデミー賞作品賞に選ばれるのは、時代を超越した作品でなければならないか

ただ、このCutの編集者は、この作品がレベルの低い作品だ、と言っているわけではないようです。とにかく彼は、同年の「レイジング・ブル」に作品賞を与えるべきだった、と言っているわけです。

確かにこの作品がこの時代に最もマッチした作品だったのかも知れないけど、映画というのは時代背景に関わらずクオリティの高い作品に与えられるべきだ、ということらしい。

言いたいことが分からないわけではないけど、私はそもそも映画の評価にその時代背景を絡めることは当たり前のことのような気がします。

で、私はこの「普通の人々」をどう思ったのか

私は、この作品は傑作だと思います。

これは客観的事実というよりは、私が個人的にこの映画に非常に感情移入した、ということもあるかもしれません。

誤解のないように言っておくと、私の家は離婚もしていないし仲も別に悪くないんですけどね。

ただ、私がもっと若い頃に感じていた虚無感とか、親に対する気持ちとか、罪悪感とか、そういうのがすごくうまく描かれているんですよね。描写力が半端ではない。

で、結局最後には家庭は崩壊してゆくんだけど、その判断そのものを否定しているわけではないんですよね。悲しいけど、それはそれで前向きなんですよね。

今でもそういう決断のできる映画は少ないと思うから、やっぱりすごい作品だと私は思います。

多分相当多くの人が当時(今も)苦しんでいて、多くの人がそれぞれ、父や、母や、子に共感したんだろうなーと思います。

多分それは、別に今だって十分同じ感動ができると思いますよ。

 

同カテゴリー記事:

 

www.nitari-movies.com