映画みなくても死なないよ

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映画みなくても死なないよ。

映画と本と芸術と旅。好き勝手やってます。

【パンズ・ラビリンス】あらすじ&ネタバレ感想とオススメ度

 

映画を観て最低最悪な気分を味わいたい、全ての方に捧げます。

「キモかわいい」から「かわいい」を取り上げた、要するに「重症キモ」映画でしたかな。

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「パンズ・ラビリンス」あらすじ

フランコ独裁政権の恐怖政治がスペインを覆いつくしていた暗黒時代。
少女オフェリアは優しかった仕立て屋の父親を亡くし、母が再婚したヒダル大尉のもとへ赴く。臨月の妻を無理に任地に呼び寄せる大尉は、まさに独裁のシンボルのような恐ろしい男。直面する現実は残酷なことばかりだった。
そんなとき彼女が見つけたのは薄暗い森の中の秘密の入り口。
オフェリアは王女として戻るための3つの試練を与えられ“パンズ・ラビリンス<牧神の迷宮>"での冒険が始まる・・・。

 

「パンズ・ラビリンス」ネタバレ感想

2層構造の優れた構成

この映画が普通のファンタジーだと思って見始めると初めに裏切られるのが、そもそもこの作品がファンタジー一層の作品ですらないことです。

ファンタジーの物語と同じかそれ以上に重要な柱として、義理の父親でレジスタンス掃討の責任者である大尉とゲリラたちの戦いの物語も綿密に描かれます。

しかも、この闘争が初め、主人公の少女オフェリアとのかかわりが全然描かれないので、どういう映画なのかはつかみづらい部分があるわけです。

ここがこの映画の誠に好ましい部分と言っていいでしょう。

そもそも私は非常に2層構造(あるいは多層構造)の作品が好きでして。二つの柱がどのように物語に交わっていくのかを見ていくのもわくわくするし、結局全然関係ない話だったとしても非常にシュールです。

2層構造を取った時点で評価はかなり上がります。ただ、当然の事ですがそれだけ描写は難しくなるってわけですね。

この作品でも、一体何を伝えたくてこの闘争シーンを描いているのか、後半まで分からないような作りになっています。

ファンタジー描写はオフェリアの現実逃避的妄想なのか

この作品を見た後の感想で、「結局、ファンタジーの描写は辛い現実世界から目をそらしたいがための、オフェリアの現実逃避なのだ」という解釈もあります。

私も初めにそうは思ったし、最後に「テストにパスして女王として永遠の命を手に入れる」というエンディング(らしきもの)が用意されていたので、そうなのかと思う要素は十分です。

しかし、見ればわかる通り、彼女が直面する「ファンタジー」は、はっきり言って現実世界に勝るとも劣らない悪夢のような世界なわけです。

そもそも初めにどでかいが現れた時点で、少女が「あなたは妖精?」みたいなことをいうわけですけど、こっちとしては「いやいやいやいやwwwwないわ」ってなっちゃうわけですよ。虫は別にでかいだけでまだファンタジックでもないんだけど、もうすでに十分怖い。

そんなのは序の口でその後も襲い掛かるグロキモいクリーチャーや数々の危険な出来事。はっきりいって、悪夢でしょう。現実では確かに酷い生活を強いられてはいるけども、なんならちょっと現実の方がわたしならうれしいかな。

私はこのファンタジーは、彼女の妄想ではなくて「死」なのではないかな、と思うんですよね。この状況下で「死」は甘い蜜をもって少女を呼び込もうとしていく、という解釈の方が分かりやすいかな。
そして、彼女もこの生活から逃れたい余り、「死」を渇望していたのではないかな。

オフェリアは弟の誕生を心待ちにしていた。
彼女は自分が「女王」であり、「永遠の命を手にする」=「死」を望み続けている。だけどそのテストの中に、愛する弟の犠牲が条件として出てきた。そこで彼女は「死」よりもつらい「生」を選ぶんです。人として生きることを選ぶということです。

何とも悲しい話です。

ちなみに、ウィキペディアではこのような解説もなされています。

タイトルにある「パン」とは、ギリシア神話に登場する牧羊神である(原題の"fauno"は、ギリシア神話のパンに対応するローマ神話の神ファウヌスのこと)。ただし、当作品に登場するパンの造形には、同じく羊の角を持つ悪魔のイメージも組み込まれている。

人物描写が傑出している映画だ

ヨーロッパの映画によくあるのですが、とにかくこの映画は人物描写が決定的に上手い

どの登場人物にも、たった一言か二言のセリフで、彼らのバックグラウンドや人間性まで浮き彫りにしようとする描写力があります。

一番顕著なのは、悪魔のようなヴィダル大尉です。

彼は本当に冷酷な人物ですが、ディナーの席で軍人に、父親の話をちょっとさせるだけで彼の人間性を全部描き切ってしまうのは本当にすごいです。彼の父親が彼に時計を遺した、という話と、ことあるごとにその割れた懐中時計を見ている大尉。これだけで彼の人間性には圧倒的な奥行きが生まれます。

ハリウッド映画では安っぽい「善悪」というものが簡単に描かれて辟易としますが、このように「絶対悪」を描きながらもその人間性にも瞬時の描写で踏み込む手腕というのは、本当にすごいと思います。

それらが伏線になって、彼の死に方も非常に素晴らしいものになっているわけです。

残酷描写はやりすぎだったのではないか?悪趣味!

悪趣味なものが全部嫌いなわけではなくて、どちらかと言えば好きな方なんですけど、そして気持ち悪いものとかも好きなんですけどね。

ただ、この映画のグロテスク描写はそこまで必要だったのかなー?と思った。

この映画は上記した通り、どちらかと言えば反戦映画でもあるわけだし、描こうとするものはかなり神秘的なものですよね。

世の中の不条理は間違いなく描かなければいけないと思うから、グロテスクな描写の全てが必要ないわけではないんです。現実を描く必要がありますから、目を背けてはいけない描写は多いのも事実。

ただ、余りにもやりすぎると、逆にカルトっぽくなるというか、効果が薄れるのではないかと。

特に、大尉が口を縫い合わせるシーンとかは、別に時代も不条理もオフェリアも全然関係ないと思うんですけどね……

ときたまそういうシーンが蛇足だったように思います。

あーゆーのをあまりにもしすぎると、面白がってるように見えちゃうんでね。そこはちょっと残念と言えば残念。

 

最後にこれだけは言いたい。

とまあ、かなりの怪作、良作であることは間違いないんですけど、最後に言わせてほしいのは、主人公の少女がマジで水原希子に似てたということです。

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公式HPより

 

【パンス・ラビリンス】オススメ度

 

 

初めにも言いましたけど、最低最悪な気分になりたい人にはこれ以上の作品はないと思います。

そもそも映画としてもなかなか面白いので、オススメですよ。