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映画【ルーム】ネタバレ感想:断じて脱出ゲーム映画ではないぞよ

この映画はストーリーは単純なのでさらっと流していこうと思います。

なかなか解説甲斐のある映画で見ごたえ十分でした。

 

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映画『ルーム ROOM』 公式サイト TOP

 

 

映画「ルーム」あらすじ

 

小さく狭い[部屋]で、5歳の誕生日を迎えたジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)。ママ(ブリー・ラーソン)は、「この部屋の外にも世界があるの」と話はじめた。
閉じ込められてきた[部屋]で生まれ育ち、[部屋]以外を知らない息子に、本当の[世界]を見せるため、脱出計画を図るママ。息を殺して望む計画は、果たして成功するのか?そしてその先にある、衝撃の[世界]とは――?

 

映画「ルーム」ネタバレ結末

監禁された「部屋」での母子の物語が前半に

 

この映画は全体的に、息子であるジャックの視線で語られます。

私はこの映画は「監禁されていた親子」の映画だと知っていたし、予告とかでも語られていたので分かった情報なんだけど、映画では特に説明がないので、本当に全く何も知らない人が見たら「この二人、どういう状況なんだろう?」ってなるところ。

 

二人で小さな家で、貧乏ながらも楽しく生活している様子が描かれます。

で、観ていくうちにこの2人が監禁されているんだということが分かります。

 

息子はもう5歳
でも、この部屋で生まれて育ったので、外に「世界」があることを知らないんですね。

母親はある時、自分が高校生の時に誘拐されて、それからずっとこの納屋に監禁されていることを息子に伝えます。
そして、息子に「自分を助けてほしい」と願い、仮病をさせるわけです。

誘拐犯は定期的に納屋に来て物資を運んでくるんだけど、その時に息子が熱を出した、という体で病院に行かせるよう求める。それでもこの男は「薬を買ってくる」とだけ言って出てゆく。

 

それでも母は失望しない。

息子が死んだ、ということにしてカーペットにくるみ、「どこかに埋めてくれ」と求めるわけです。
既に息子が逃げる算段は整えてあった。

 

で、誘拐犯は仕方なくトラックの荷台にカーペットにくるんだ息子を乗せて出発。

息子は初めて見る外の世界にびっくりしながらも、言われた通り、車がゆっくりになったときに飛び降ります。

しかし誘拐犯に気づかれ、彼は息子を連れ戻そうとする。

そこに犬を散歩に来た人が駆けつけて、誘拐犯は案外あっさり逃亡してしまい、息子は警察に保護される。

警官の女性の聴取で、息子が監禁されていたらしいことが分かり、場所も特定。その足で警官は母子が監禁されていた場所に向かいます。

 

この時点で、私は「もう絶対母は殺されている!」と思った。

しかし、母は生きていたんですね。

 

この映画、ここまでで大体1時間くらいです。

 

そもそも「監禁から脱出する話」なのかと思って観てたらあっさり二人とも脱出したので、これはかなり面白いな、と思いました。

こちらを緊張させるためだけどサスペンスにはうんざりしていましたので。

 

外の世界で暮らし始めた母子の物語が後半

 

母子は無事に保護されて、母の両親(ジャックの祖父母)も彼女を迎えに来る。

実は両親は、娘が消えてから離婚して、母には新しい再婚相手がいたんですね。

 

で、母子は、もともと母が済んでいた家(今は祖母と再婚相手が住んでいる)に帰ります。

初めは何もかもに恐れをなしていた息子ですが、祖母の愛や祖母の再婚相手の優しさに触れてだんだん世界に慣れて来る。

 

しかし問題は母の方で、彼女は自分の失ったものの大きさに衝撃を受け、心を病んでいきます。

母の父(ジャックの祖父)は、ジャックの父親が誘拐犯だということで、ジャックの顔をまともに見ることができず、その事を母は責め立てます。

 

弁護士費用などが必要なため、テレビ出演を決めた母。しかし、収録でインタビュアーに言われた言葉を気に病んで、とうとう大量に薬を飲んでしまいます

母は一命を取り留めましたが、しばらく入院が必要になったわけです。

 

息子は、いつか自分がカーペットに包まれたときに、母の抜けた歯を「母の一部」だと思ってお守りにしていたことを思い出し、一度も切ったことがなかった長い髪を祖母に切ってもらって、その髪をお守りとして母に送ります。

 

息子は初めは母がいなければしゃべることもできなかったのに、日に日に世界に順応し、祖母や再婚相手とも仲良くなり、近所の子供とも楽しく遊ぶようになります。

そして、多少回復した母が戻ってきます。

戻った母に、「部屋に戻りたい」というジャック。

二人は警察の許可を得て、自分たちが5年間(母は7年間)監禁されていた納屋に行きます。
そこには既に、暮らしていたものは全く残っておらず、残骸だけが残っているのみ。

 

息子は「さようなら」と部屋にさよならを告げて、二人で去ってゆく、という物語。

 

映画「ルーム」感想

 

これはかなり出来のいい映画でしたね。

途中でちょっと言いましたけど、この映画は基本的には猛烈にドラマチックにしようと思えばできるテーマなのにそれらを捨て、あえて感情の起伏を全く描かない淡々とした作りになっています。

しかし、だからこそ真に迫っているし面白かった。

 

そもそも、この映画が「脱出劇」にならなかったことに称賛の拍手を送りたいところ。

比較的あっさり脱出を描いたのは(まあかなりドキドキしましたけど 笑)、この映画の核になるテーマが「脱出劇」ではないからです。

 

じゃあ、この映画のテーマは何なのか。

 

映画に込められたテーマの真摯さ

 

前に、「LION/ライオン~25年目のただいま~」の評でも書いたんだけど、実はこの「ルーム」と「ライオン」には共通する点がある。

それは、どちらの話も「特殊な状況から原点に返る」というところです。

 

前者では、「Google Earthを使って、自分の故郷を見つける」で、後者は「子どもと力を合わせて監禁状態から脱出する」という点です。

 

しかし、「ライオン」はかなりつまらない作品でした

詳しくはその評を読んでいただければわかりますけど、要するにこの映画は「特殊な方法」を描くことに終始して、人間ドラマをおろそかにしてしまったわけです。

 

 

一方で「ルーム」の方は、そういった点を完ぺきにクリアしていました。

「ルーム」では、17歳の頃に監禁された女性が監禁先で犯人の子供を産み、5歳まで育てたのちに脱出する、ということをストーリーの核に据えながら、あくまでも映画のテーマは「親子愛」であり、「子ども」という存在そのものだったりします。

本当に素晴らしい視点の置き方だと思いました。

 

この映画では、はじめからカメラを「子ども目線」にすることが多かったですね。

大人たちを見上げるカットや、ゆらゆら揺れる視線のカットで、この息子の精神世界を描くことに成功しているわけです。

 

この映画は、特殊な状況で育てられた子供を描いています。

しかしながら彼は、今まで母と誘拐犯の事しか知らず、外に世界があることすらも知らなかったわけですよね。

要するに、「特殊な状況」とは言っているけど、この映画が描こうとしていたのは結局完全に純粋な「子ども」そのものなんですね。

事件をモチーフにして、「子ども」や「人間」を描こうとしているわけです。

 

実は結構哲学的な作品とも受け取れます。

本当に素晴らしいです。

 

映画「ルーム」は役者やキャラクターが光る作品

 

この映画は出演している役者も例外なく素晴らしかったですね。

まずは、息子役のジェイコブ・トレンブレイの天才さ。全く圧巻です。信じられない表情をしてきたりします。

この少年の演技で最も衝撃的だったのは、祖母の再婚相手が飼っている犬を連れて来るシーン。初めて生で見る動物に、おびえながらも見せた嬉しそうな表情には、びっくりしすぎてひっくり返りそうになりました。

 

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そしてもちろん、アカデミー賞を受賞したブリー・ラーソン。素晴らしいです。

しかし私としては心から、祖母の再婚相手に称賛を送りたい、
彼は本当に素晴らしかったですね。

余りにもいいやつだった。

 

普通に考えたら、祖母と二人で暮らしていたのにイキナリこんな母子が転がり込んできて、相当メンドクサイはずですよね。

しかし彼はメンドクサイどころか孫にこの上なく優しく接する。

 

考えてみたらです。
祖母は愛する娘を失ったことで夫とも別れた状態で、そんなやばい状態の祖母と再婚しようって男なんです。

心から優しかったんだな、というのと、祖母の見る目の確かさに感服。

もちろん、役者も素晴らしい演技を見せています。

 

それにしても、この映画の核ですけど、子どもっていうのは本当はものすごく順応性が高い(個人差もありますが)のだけど、やっと助かった母が心を病んで自殺未遂にまで陥るところは本当に人間て難しいな、と思いながらも凄い説得力でした。

誰でもあんな風になるんだろうなーとか思いました。

 

映画「ルーム」オススメ度は?

 

 

これはかなり上質な作品です。

脱出劇だと思う人は勘違いですが、とりあえずすべての人にオススメしたいと思います。