映画みなくても死なないよ

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画みなくても死なないよ。

映画と本と芸術と旅。好き勝手やってます。

ネタバレ感想【田中慎弥:孤独論 逃げよ、生きよ】田中慎弥オタクが斬る!!!

私が敬愛してやまない、田中慎弥氏の新作はエッセイでした。

田中慎弥の久々のエッセイ!

私はこの作家が大好きで、全作品読んでいます。

田中慎弥の経歴を簡単に説明すると、高校を卒業してから33歳で作家デビューするまで、ずーっと引きこもりをしていました。母と一緒に暮らしていて、アルバイトすらもしたことがありません。

デビューして数年たって、「共喰い」という作品で芥川賞を受賞しています。執筆方法も古風で、まさかの、原稿用紙に鉛筆を使用しているとのこと。作品も純文学。

とはいってもコテコテの純文学というか、なんか全体的に変な小説が多いです。

「孤独論」楽しみに読みましたが、期待ほどではなかった。要点はいくつかあります。

田中慎弥氏が伝えたいこと

田中慎弥は、現代人は仕事や、人間関係や、情報の「奴隷」になっているのではないかと言います。

それで、幸せなのか?と問いかけます。

そんな奴隷状態は不健全である。
堂々と、逃げるべし。
仕事なんか、嫌なら辞めてしまえ。

そう、田中氏は言います。

インターネットにしたって、もともとは使いこなす、ということを念頭に置いて開発されたものなのに、いつの間にか情報の奴隷になっている

インターネットを使うなとは言わない。ただ、奴隷になるくらいなら距離を置いてみるべきではないか、というのです。

何一つ、目新しいことは言っていない

インターネットの出現によって、情報を操るどころか操られているのではないか、という視点は、余りにも古い。古すぎる。

私もそんな論文というか、レポートみたいなものを書いたことがありましたが、高校の時ですから15年くらい前の事です。しかも、その時点ですでに「視点が古い」と指摘されました。

インターネットの奴隷になっているかどうかは、まず田中慎弥氏がインターネットを人並み程度に使ってみないと分からないと思います。

インターネットの利便性を、インターネットを使わない人が説くからおかしなことになるんだ。 余りにも後進的過ぎて、全然ついていけなかった。  

「逃げろ逃げろ」というけども

田中氏は、仕事にがんじがらめになるくらいならいっそ辞めてしまえという。

確かに、私も同じ考えを持っているし、最近よく読んでいるホリエモンなんかも同じことを言っています。

数多の社会学者や若き起業家も同じようなことを言っています。
世の中にはびこるプロのブロガーなんかその最たるものですよね。

ただ、田中氏の場合、辞めたその先の戦略的なことは一切何も言っていないんですよね。

「やめても何とかなる」みたいな漠然としたことしか言っていない。
逃げた後の事は、逃げて冷静になってから考えればいい、と。

確かにその通りなんだけども、何も考えずに辞めろというならばあまりにも説得力に欠ける。それに、全然論理的でもない。

逃げて冷静になれるかどうかがまず疑問です。 (私はさらさら逃げるタイプなので田中氏と同じタイプですけど)

しまいには、「やりたいことが分からなければ、小さい頃から好きだったことを職業にするような視点を持ったらどうか」と言ったりします。

余りにも客観性を欠いたトンデモ発言です。

何度も言いますが私自身は田中氏と同じような考え方を持っているし、実際に昔から好きだったことから職業につなげられそうなことを探します。

しかし、何しろ好きなことを職業にしたい人はいいけど、誰もがそうだとは限らない。

野球が好きだから野球にかかわる仕事に就け、というのは、思考回路としては小学生レベルだと思う。  

社会学的論理からほど遠い、感情論というか勢い論 全体を通じて一時が万事そんな感じ。

とにかく、具体性も客観性も全然ないわけですね。 だから本当に浅はかに見える。

社会学の本などを最近少し読んだりしますから、そういう人の書いたものと比べると、大枠は同じようなことを言っているつもりでもまさに机上の空論。

薄っぺらいし、絵空事だなあと思うわけです。

何度も言いますが、私自身の考えは田中氏と近いものがあるのですが、プロセスが全然違うわけですよね。  

そもそも田中氏がそんなにウキウキと楽しそうに見えない

そもそも、です。 田中慎弥という作家が楽しそうに笑っている姿を、私は全然見たことがありません。

いつもふてくされています。

f:id:nitari-movies:20170403210333j:plain

芥川賞受賞・田中慎弥「とっとと会見を終わりましょうよ」 喜びの声なく終始不機嫌 | ニコニコニュース

人の幸せを云々する前に、あなたが幸せそうではないのだ!!!(でも好き)

しかしそんな田中氏がやっぱり私は好きだ。

しかし上の動画を見ても分かるように、田中慎弥はあまりにも魅力的な作家です。

「孤独論」も、出版される前にインターネットの行を試し読みして、「田中慎弥、なんてつまらない事を言うんだ」と思ってかなり心配になりましたが、一般の人にとってこの本があまり為にならなかったとしても、田中慎弥のファンにとってはなかなか面白いものだったのは確かです。

田中慎弥がどのように普段、文学と向き合っているのかがよく分かりますので。 あと、たまにちょっと面白いことも言っています。

例えば、「趣味に準じた職業を目指せ」みたいなことを書いているところで以下抜粋。

もしもあなたがその競技を本当に好きなら、もっと切実にかかわろうとしてもいいのではないでしょうか。反発承知でもうひとつ言うなら、他人を応援して満足している場合なのですか。他人がメシを食っている姿を横で眺めていて、果たして自分の腹が太るのか?

本文より抜粋

なんてことを言っています。面白いです。

そもそも、普通の人からしたら「それが何か?」というような薄っぺらい事を語って一冊の本にしてしまうほど客観性を欠いた、言わば変わり者です。

本として、変すぎる。
これ、よく編集の人企画したなあ。(もはや企画倒れでは?)

そこが、田中慎弥ファンとしてはすごくいいのですが。

田中慎弥のファンとかじゃなくて普通にこの本を楽しめるのは、おじいさんとかおばあさんだけじゃないでしょうか。

田中慎弥は以前にも「これからもそうだ。」というエッセイを出版しています。 これもAmazonでの評価は高いですが、別段面白くないです。 今回読んでやっぱり思ったけど、田中慎弥はどう考えたって小説が良いです。

何を読むのがいいかというと、お薦めは「図書準備室」「神様のいない日本シリーズ」「炎と苗木」です。 お読みになっていない方は、この辺りからぜひ。