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【アイヒマン・ショー】ネタバレ感想:意外と硬派なホロコースト映画

マーティン・フリーマン主演の「アイヒマン・ショー」を観ました。

ホロコーストに関する映画です。

 

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アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち : 作品情報 - 映画.com

 

「アイヒマン・ショー」のあらすじ

 

1961年に開廷した、元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判。ナチスのユダヤ人たちに対する蛮行の数々とはどういうものだったのか、法廷で生存者たちから語られる証言は、ホロコーストの実態を明らかにする絶好の機会だった。テレビプロデューサーのミルトン・フルックマンとドキュメンタリー監督レオ・フルビッツは、真実を全世界に知らせるために、この「世紀の裁判」を撮影し、その映像を世界へ届けるという一大プロジェクトを計画する。

 

「アイヒマン・ショー」のネタバレ感想

エンタメ要素は非常に低い、硬派なホロコースト映画 

 

ストーリーを見たときには、てっきりこの映画は「アイヒマン裁判」を全世界に放映するために奔走する話なのかと思ってました。

いろいろな弊害があってもめげずに映像を放映した人の話かと。

実際にこの映画には、そうしたマスコミの方々の奮闘も描かれてはいますが、本質的には「ホロコーストの真実を伝える為の映画」という感じでした。

つまり、柱になっているのはどちらかと言えば「アイヒマン裁判」の内容そのものですね。ストーリーはあまりありません。

もっと七転八倒する話かと思っていた私としては思ったよりも硬派な作品で、いい意味で裏切られました。

 

実際に当時おそらく放送されていたのだろう映像がかなりたくさん出てきます

特に、アドルフ・アイヒマンの映像などは、あまり見たことがないものだったので、すごく興味深かったです。
映画には、ホロコーストのドキュメンタリー映像もかなりたくさん流れます。予期していなかった人にとってはかなり衝撃的かもしれない映像や、実際の「アイヒマン裁判」のインタビューが大量に流れるので、すごく勉強になります。

そういったものが基本的には柱になっているので、マーティン・フリーマンらが演じる登場人物たちにはあまりドラマはありません。映画に必要な程度の最低限のストーリーさえあれば、必要ないのです。

基本的には淡々としているわけです。

 唯一、登場人物たちの感情の動きとして大きなものとしては、劇中のドキュメンタリー監督が途中からアイヒマンに没頭し始めて憑りつかれたようになってしまう部分です。

 

「アイヒマン・ショー」が問いかけるメッセージ

 

ホロコーストでは600万人のユダヤ人たちが虐殺されたと言われています。

その責任を負うべきアドルフ・アイヒマンは、生き残ったユダヤ人たちのどんな証言を聞いても、ドキュメンタリー映画を観ても顔色一つ変えない。

これは一体どういうことなんだろう?とは誰でもが疑問を持つ事だと思います。

ドキュメンタリー監督は、このことが納得いかない。
彼は、アイヒマンにも人間らしい感情があるに違いないと思っているのです。だから、この裁判でアイヒマンがその「人間性」をさらけ出す瞬間をずっと待っているわけです。

なぜかというと、アイヒマンが「生まれついての悪魔」だと思いたくないからです。

普通にの人間があるとき何かの拍子にこのような大事を引き起こしたのだと考えることで、誰にでもこのような狂気に囚われる可能性があるのだと証明したいのです。

 

この考え方は現代にも凄く重要な点だと思います。

今の世の中って、多分ホロコーストに関してもそうだし、いろんな重軽犯罪に対してもそうなんですけど、余りにも「自分から完全に乖離したものだ」と勘違いしてしまう人が多いですよね。

ホロコーストに関して、「ナチスって本当に酷いよね。ユダヤ人は可哀想だったよね」というのでは、意味がないのです。

あくまでも、どうしてこのようなことが起こってしまったのかを考えなければならないし、我々の心にある少しの感情の動きの延長に、ホロコーストのような出来事があったと考えるべきなのだと思います。

この映画ではそのようなことを言いたかったのだろうな、と思います。
しかし、実際はアイヒマンは人間性の欠片も見せることなく裁判は終わります

 

私自身、このアイヒマンをはじめ、ホロコーストがどうして起きてしまったのか。ナチスの精神性が本当に理解できません。

アイヒマンやナチスはもちろんの事、彼らを支持してしまったドイツ国民の心理はどういうことなんだろう?と思う。

 

実際に私もアウシュヴィッツに行ったり、ベルリンでもユダヤ人の博物館に行ったりしてできる限り勉強はしているけども、なかなかわかるものではありません。

何よりも問題なのは、「ホロコーストって酷かったよね」で終わらせてしまっている現代社会ではないでしょうか?

「南京大虐殺」は嘘だよって言ってる日本人もいますがね……
(ホロコーストはなかったとか言ってる人もいるし)

 

「アイヒマン・ショー」のオススメ度は?

 

この映画の目的は、普通の戦争エンタメ作品だと思って見に来た人にホロコーストのドキュメンタリーを放り込んで意図を伝えようという、多少荒っぽい作品ではあるので、ちょっと予期してなかった人にはトラウマ的作品になってしまうかも知れません。

作品のクオリティとかいいう野暮なことを言い始めたら、まあバランスの良い作品とは言えないかも知れませんが、作品の意図はよく伝わるし、お涙頂戴にもなってない。

まじめにホロコーストを伝えようとした作品です。

なのでこの映画はオススメです。
私自身、久々にナチズムに関していろんなことを考えるきっかけになったので、よかったと思います。